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『カリキュラムデザインの道具箱』β版 第1部 第1章

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本書は、2021年から2022年初めにかけて、探究学習の普及に尽力されている「こたえのない学校」と協働で実施し、ご好評いただいたカリキュラムデザインの講座、「シンプルに深く学ぶカリキュラムデザインを探究する カリキュラム工作室」のために製作された教科書です。今回は、第1部・第1章を配信します。 ●制作の動機と道のり カリキュラム工作室を始めたいと思ったきっかけは、友人・知人の先生たちからさまざまな相談を受けたことでした。学習指導要領の言葉が複雑すぎてわからない、概念探究を実施してみたいけれど概念という言葉がうまく理解できず具体化するイメージが持てない、総合学習を実施してみたいけれどどんな風に年間の計画を立てれば良いかわからない、などなど。 また、概念学習や探究学習と、これまでの教科の授業や総合学習、そして学習指導要領とをそれぞれまるで対立するものであるかのように語ることで新旧、官民学を互いに分断させるような世間やネットの言葉に遭遇して、先生自身が「公立にいるべきか、私立に行くべきか」「オルタナティブでなければやりたいことはできないのではないか」と自分の進むべき道について迷い、どうしたらいいのかと悩まれている姿に出会ったことも、大切なきっかけでした。 当初はその相談を受けて、「概念学習も、総合学習も、探究も授業も、公立でも私立でもオルタナティブでも、学習指導要領とも矛盾しないあり方でカリキュラムをデザインすることはできる」と、個別に対応していました。 けれど、やはり個別に対応しきれなくなった折に、学習指導要領の背景にあるさまざまな学術的な知見と教育実践の事例に基づきつつ、国内外で実施され始めている「概念に基づく探究」のカリキュラムデザインと、国内で伝統的に実践されてきた総合学習や教科学習のカリキュラムデザインとを、矛盾なく行き来できるような「橋渡し」を行うことが必要かもしれないと、こたえのない学校の代表の藤原さとさんに相談して共感していただき、共同開催できることになったのでした。 * 講座には、ありがたいことに公立・私立・オルタナティブを問わず、小中高など学校種を問わず、また教職員、管理職、社会教育関係者、教育委員など立場・役職を問わず、働く地域も違うさまざまな方々にご参加いただきました。そんな皆さんが、グループを組みながら指導要領などを用いて実施できる自身の知的好奇心に駆動される探究的なカリキュラムデザインを試行錯誤し、概念的に学ぶこと、また学習材を通じて学ぶことが本来持つ好奇心の満ちていく面白さ、楽しさを味わう関係性が結ばれていくありようは、とても心が動かされるものがありました。 一方で、カリキュラムデザインの前提となる、教育哲学・思想、教育心理学、教育社会学、教育工学などが蓄積してきた理論的な視点や、「概念に基づいた探究」などで求められる概念的に物事を考える視点、総合学習で求められる魅力的な学習材を見とる視点を使いこなせるようになるには、そうした理論的な視点を実践的に自分のものにして捉え返す考え方を、一人ひとりの日々の具体的な実践や生活実感と結びつけていく「時間」が必要だという課題感も感じていきました。 しかし考えてみると、こうした生活実感と結びついていく時間の必要性は、学校で教科書のなかの内容がわからず苦しんでいる子どもたちが直面しているそれと同じものですし、しかもその時間をたっぷり確保するためにも探究学習や総合学習が歴史的に生み出されてきたのじゃないかということに思い至ったとき、 概念の意味を学術的にかみくだいて説明する動画ではなく、たとえばキッチンのビーカーの目盛りに書かれた「リットル」には「計量」や「単位量」の概念が埋め込まれているように、概念が自然に用いられている身近な経験を紹介しながらイラスト付きで図解し、口語体で会話のやりとりのなかで、ゆったりと自分のタイミングで時間をかけながら自ずと学べるような本を作ろう、と思いついたのでした。 (言い換えると、結城浩さんの「数学ガール」のように架空の登場人物たちの会話を通じて学術的なことを解題していく本、あるいは、あさりよしとおさんの「まんがサイエンス」のように漫画的なイラストで抽象的なことや想像的なことを図解していく本を作ろうと思い至ったのでした) そのため、本書は基本的に架空の登場人物たちの会話によって折りあげられています。ちょっと複雑な内容になりそうなところでは、イラスト付きでその内容のイメージを図解しています。本当はイラストレーターさんや漫画家さんにお願いできたらとも感じましたが、イラストはすべて自家製です。 さらにちょっとややこしいことに、本書はいわゆる教育学やカリキュラム研究など大学で講義され研究されている学術書レベルの内容と、現場で重宝されている教育書に記載されている具体的な実践レベルの内容とを、フラットにつないでいくため、「これは書籍としては学術書なのか教育書なのか手順書なのか」と、分類がしづらく読み手としても困惑してしまうかもしれません。 ただ書き手の立場としては、しばしば分断されがちな理論と実践、より厳密に言えば抽象と具体の間を橋渡ししていくことを試みている本として受け止めて下さると、ありがたいです。実際にその橋渡しができているかは、皆さんからのご感想を真摯に受け止めながら適宜判断しつつ、改訂を重ねていきたいと思っています。 * 最後に、本書の執筆・配信スケジュールについてお伝えさせてください。本書はいまなお製作中(2022年7月末で第1-4、9-10章まで執筆を終えている段階)で、いわばWEB漫画・エッセイの連載のようなイメージでBoothにて配信していく予定です。巻末にアンケート画面に遷移するQRコードを用意していますので、読者の皆さんからのフィードバックをいただきながら版を改めていきたいと思っています。 今後、章ごとに連載的にアップロードをしていくにあたって、率直な書き手へのフィードバック会を兼ねつつ、内容をより深く理解できるよう章ごとの内容に関連したワークショップも開催していく予定です。章の無料サンプルデータもそのワークショップの告知記事に添付しておりますので、ご関心を持たれた方はぜひお申し込みいただければ幸いです。 書名 カリキュラムデザインの道具箱 β版 対話篇 第1部 第1章 第1版 編著者 カリキュラム工作室 発行元 桐田書店 よはく ©2022 問い合わせ先 http://keisukekirita.com/contact/ 発行日 2022年8月1日 サイズ:A4 ページ数:51ページ ※サンプル画像は見開きになっていますが、販売するデータはPDFのため1ページずつの表示になります。あらかじめご了承ください。 ※※第1章冒頭までの無料のサンプルデータは、以下の本データをもとにしたワークショップ告知記事のリンクからご覧いただけます。 https://wp.me/p6vI3s-1ym ==以下、本書冒頭より抜粋== ●ごあいさつ はじめまして。カリキュラム工作室店主の桐田と申します。本書は学習指導要領を用いて学習材や概念に基づくカリキュラムデザインとマネジメントを形にしていくための理論と実践について探究する「カリキュラム工作室」の教科書として製作されたものです。 カリキュラムデザインやそのマネジメント、教科や総合での探究、概念、学習材、学習指導要領などのトピックに関心を持つ方にも有益な資料となるよう、心がけました。 具体的には、学習指導要領に基づきながら多様な現場の状況や特質に応じて、教員がしなやかにカリキュラムデザインを実践する際に役立つ「視点」と「道具」をひとつひとつ整理・ 整頓し、文字通り「道具箱」のように読者の方が活用できるよう、構成の点で工夫を試みています。 至極当たり前のことで恐縮ですが、道具には「用途」ごとに「出番」があります。例えば野菜炒めを作る場合、まずは清潔な調理器具を棚などから取り出して、蛇口から水を流して野菜を洗い、まな板に載せて、包丁で適当なサイズに切ってボウルなどに入れておき、肉も準備しておいて、フライパンに油を引きコンロに火をつけて炒めるというように。 ですので、この本でもカリキュラムをデザインする、特に教育活動・学習活動のまとまりとしての「単元」を作る過程で役立つさまざまな視点を「道具」として切り分け、その出番ごとに適切な使い方を、具体例と使用法に関するQ&Aにして対話形式でお伝えしていくことにしました。 また、この本は講座の教科書という体裁上、まずβ版(最終調整版)として切り出して、質問やフィードバックなどをいただきながらその都度バージョンを洗練させていくという開発方針で作っていくことにいたしました。お手数ですが感想だけでも結構ですので、感じたことなどがあれば巻末のフィードバックフォームにご連絡いただけますと幸いです。

本書は、2021年から2022年初めにかけて、探究学習の普及に尽力されている「こたえのない学校」と協働で実施し、ご好評いただいたカリキュラムデザインの講座、「シンプルに深く学ぶカリキュラムデザインを探究する カリキュラム工作室」のために製作された教科書です。今回は、第1部・第1章を配信します。 ●制作の動機と道のり カリキュラム工作室を始めたいと思ったきっかけは、友人・知人の先生たちからさまざまな相談を受けたことでした。学習指導要領の言葉が複雑すぎてわからない、概念探究を実施してみたいけれど概念という言葉がうまく理解できず具体化するイメージが持てない、総合学習を実施してみたいけれどどんな風に年間の計画を立てれば良いかわからない、などなど。 また、概念学習や探究学習と、これまでの教科の授業や総合学習、そして学習指導要領とをそれぞれまるで対立するものであるかのように語ることで新旧、官民学を互いに分断させるような世間やネットの言葉に遭遇して、先生自身が「公立にいるべきか、私立に行くべきか」「オルタナティブでなければやりたいことはできないのではないか」と自分の進むべき道について迷い、どうしたらいいのかと悩まれている姿に出会ったことも、大切なきっかけでした。 当初はその相談を受けて、「概念学習も、総合学習も、探究も授業も、公立でも私立でもオルタナティブでも、学習指導要領とも矛盾しないあり方でカリキュラムをデザインすることはできる」と、個別に対応していました。 けれど、やはり個別に対応しきれなくなった折に、学習指導要領の背景にあるさまざまな学術的な知見と教育実践の事例に基づきつつ、国内外で実施され始めている「概念に基づく探究」のカリキュラムデザインと、国内で伝統的に実践されてきた総合学習や教科学習のカリキュラムデザインとを、矛盾なく行き来できるような「橋渡し」を行うことが必要かもしれないと、こたえのない学校の代表の藤原さとさんに相談して共感していただき、共同開催できることになったのでした。 * 講座には、ありがたいことに公立・私立・オルタナティブを問わず、小中高など学校種を問わず、また教職員、管理職、社会教育関係者、教育委員など立場・役職を問わず、働く地域も違うさまざまな方々にご参加いただきました。そんな皆さんが、グループを組みながら指導要領などを用いて実施できる自身の知的好奇心に駆動される探究的なカリキュラムデザインを試行錯誤し、概念的に学ぶこと、また学習材を通じて学ぶことが本来持つ好奇心の満ちていく面白さ、楽しさを味わう関係性が結ばれていくありようは、とても心が動かされるものがありました。 一方で、カリキュラムデザインの前提となる、教育哲学・思想、教育心理学、教育社会学、教育工学などが蓄積してきた理論的な視点や、「概念に基づいた探究」などで求められる概念的に物事を考える視点、総合学習で求められる魅力的な学習材を見とる視点を使いこなせるようになるには、そうした理論的な視点を実践的に自分のものにして捉え返す考え方を、一人ひとりの日々の具体的な実践や生活実感と結びつけていく「時間」が必要だという課題感も感じていきました。 しかし考えてみると、こうした生活実感と結びついていく時間の必要性は、学校で教科書のなかの内容がわからず苦しんでいる子どもたちが直面しているそれと同じものですし、しかもその時間をたっぷり確保するためにも探究学習や総合学習が歴史的に生み出されてきたのじゃないかということに思い至ったとき、 概念の意味を学術的にかみくだいて説明する動画ではなく、たとえばキッチンのビーカーの目盛りに書かれた「リットル」には「計量」や「単位量」の概念が埋め込まれているように、概念が自然に用いられている身近な経験を紹介しながらイラスト付きで図解し、口語体で会話のやりとりのなかで、ゆったりと自分のタイミングで時間をかけながら自ずと学べるような本を作ろう、と思いついたのでした。 (言い換えると、結城浩さんの「数学ガール」のように架空の登場人物たちの会話を通じて学術的なことを解題していく本、あるいは、あさりよしとおさんの「まんがサイエンス」のように漫画的なイラストで抽象的なことや想像的なことを図解していく本を作ろうと思い至ったのでした) そのため、本書は基本的に架空の登場人物たちの会話によって折りあげられています。ちょっと複雑な内容になりそうなところでは、イラスト付きでその内容のイメージを図解しています。本当はイラストレーターさんや漫画家さんにお願いできたらとも感じましたが、イラストはすべて自家製です。 さらにちょっとややこしいことに、本書はいわゆる教育学やカリキュラム研究など大学で講義され研究されている学術書レベルの内容と、現場で重宝されている教育書に記載されている具体的な実践レベルの内容とを、フラットにつないでいくため、「これは書籍としては学術書なのか教育書なのか手順書なのか」と、分類がしづらく読み手としても困惑してしまうかもしれません。 ただ書き手の立場としては、しばしば分断されがちな理論と実践、より厳密に言えば抽象と具体の間を橋渡ししていくことを試みている本として受け止めて下さると、ありがたいです。実際にその橋渡しができているかは、皆さんからのご感想を真摯に受け止めながら適宜判断しつつ、改訂を重ねていきたいと思っています。 * 最後に、本書の執筆・配信スケジュールについてお伝えさせてください。本書はいまなお製作中(2022年7月末で第1-4、9-10章まで執筆を終えている段階)で、いわばWEB漫画・エッセイの連載のようなイメージでBoothにて配信していく予定です。巻末にアンケート画面に遷移するQRコードを用意していますので、読者の皆さんからのフィードバックをいただきながら版を改めていきたいと思っています。 今後、章ごとに連載的にアップロードをしていくにあたって、率直な書き手へのフィードバック会を兼ねつつ、内容をより深く理解できるよう章ごとの内容に関連したワークショップも開催していく予定です。章の無料サンプルデータもそのワークショップの告知記事に添付しておりますので、ご関心を持たれた方はぜひお申し込みいただければ幸いです。 書名 カリキュラムデザインの道具箱 β版 対話篇 第1部 第1章 第1版 編著者 カリキュラム工作室 発行元 桐田書店 よはく ©2022 問い合わせ先 http://keisukekirita.com/contact/ 発行日 2022年8月1日 サイズ:A4 ページ数:51ページ ※サンプル画像は見開きになっていますが、販売するデータはPDFのため1ページずつの表示になります。あらかじめご了承ください。 ※※第1章冒頭までの無料のサンプルデータは、以下の本データをもとにしたワークショップ告知記事のリンクからご覧いただけます。 https://wp.me/p6vI3s-1ym ==以下、本書冒頭より抜粋== ●ごあいさつ はじめまして。カリキュラム工作室店主の桐田と申します。本書は学習指導要領を用いて学習材や概念に基づくカリキュラムデザインとマネジメントを形にしていくための理論と実践について探究する「カリキュラム工作室」の教科書として製作されたものです。 カリキュラムデザインやそのマネジメント、教科や総合での探究、概念、学習材、学習指導要領などのトピックに関心を持つ方にも有益な資料となるよう、心がけました。 具体的には、学習指導要領に基づきながら多様な現場の状況や特質に応じて、教員がしなやかにカリキュラムデザインを実践する際に役立つ「視点」と「道具」をひとつひとつ整理・ 整頓し、文字通り「道具箱」のように読者の方が活用できるよう、構成の点で工夫を試みています。 至極当たり前のことで恐縮ですが、道具には「用途」ごとに「出番」があります。例えば野菜炒めを作る場合、まずは清潔な調理器具を棚などから取り出して、蛇口から水を流して野菜を洗い、まな板に載せて、包丁で適当なサイズに切ってボウルなどに入れておき、肉も準備しておいて、フライパンに油を引きコンロに火をつけて炒めるというように。 ですので、この本でもカリキュラムをデザインする、特に教育活動・学習活動のまとまりとしての「単元」を作る過程で役立つさまざまな視点を「道具」として切り分け、その出番ごとに適切な使い方を、具体例と使用法に関するQ&Aにして対話形式でお伝えしていくことにしました。 また、この本は講座の教科書という体裁上、まずβ版(最終調整版)として切り出して、質問やフィードバックなどをいただきながらその都度バージョンを洗練させていくという開発方針で作っていくことにいたしました。お手数ですが感想だけでも結構ですので、感じたことなどがあれば巻末のフィードバックフォームにご連絡いただけますと幸いです。